【人事労務クラウドサービス導入支援日記】 第1回 クラウド導入の成否は、社労士で9割決まる

勤怠管理、給与計算、労務管理などの業務のクラウド化が進んでいますが、現場ではどのような課題があるのでしょうか。社労士事務所での勤務経験を活かし、中小企業をはじめとした多くの企業の業務をクラウド化する導入支援に携わっているTECO Design 代表杉野愼氏に聞きます。

株式会社TECO Design
杉野 愼(すぎの しん )

広島大学大学院修了後、医療系IT上場ベンチャー企業において、営業手法マニュアル化によりトップセールスを達成。その後、社会保険労務士事務所において、100件以上の給与・労務・勤怠サービスの移行作業に携わる。2019年に、士業事務所向けのコンサルティング業務と、企業様向けの労務関連クラウドサービスの導入支援を行うTECO Designを設立。

※この記事は「ダイヤモンド働き方研究所」から移管されました。

変わる社労士、変わらない社労士

「定型外業務」で差がつく

クラウドサービスを活用して、人事労務関連の業務を効率化しようと考えている会社は多いと思います。しかし、「クラウドサービスを選ぶことと同じくらい重要なのが、社会保険労務士(社労士)の選び方である」ということは見落とされがちです。

社労士には、社会保険の手続き業務や給与計算、就業規則の作成など、法律で定められた定型業務があり、それ以上のことはしないという社労士も多いようです。しかし、そのように自分で自分の業務を限定してしまっている社労士は、業務のクラウド化など新たな企業側のニーズへの対応が遅れがちです。

働き方改革、テレワークへの対応

2020年からは中小企業でも働き方の制度改革が本格化し、残業の上限が設けられたり、有給休暇の年5日の取得が義務化されたりしています。社員ひとりひとり、あるいは部門ごとに、残業時間や有給取得状況を把握する必要が出てきているのです。また、短時間正社員や、フレックスタイム制や裁量労働制で働く人などへの対応も必要になっています。

さらに各社とも、テレワーク、リモートワークへの対応も迫られています。労基法やさまざまなリスクにも配慮しながら、テレワークをどうやって導入するのかなど、すぐに手を打たなければならない事案が増えています。

士業は「紙とはんこ」が幅を利かせる世界

「クラウドサービスを使える社労士」は1割以下?

では、以上のような環境で人事関連の業務を効率化してくれる社労士を選ぶにはどうすればいいのでしょうか。

とても簡単な見分け方があります。それは、その社労士事務所自身が、クラウドサービスを自分の事務所の業務のために利用しているかどうか、ということです。クラウドサービスを”きちんと”活用している社労士は、もしかしたら全体の1割もいないかもしれませんが。

中小企業で、なかなかクラウドサービスの導入が進まない原因の一つは、クラウドサービスの使い方に習熟している社労士が少ないことも理由のひとつです。顧問社労士がクラウドの導入に難色を示したりすると、顧問先の会社もクラウドサービスを導入しにくいのです。

そもそも「士業」は、紙とはんこが今でも幅を利かせている、保守的な世界です。クラウドサービスの利用は自分の仕事ではないからやらない、という社労士もいます。やらない理由はいくらでもみつかります。クラウド上のファイル共有は「セキュリティが問題」、チャットツールは「使い慣れていない」などといった理由です。

そんな保守的な業界で、自分の事務所でもクラウドサービスを活用している社労士がいれば、顧問先企業のクラウド化にも前向きに取り組んでくれる可能性が大きいといえます。

「ビジネスチャット」でいつでも相談

クラウドサービスを利用すれば、多くの企業が社労士に対して抱く不満が解決される、という効果もあります。

企業が顧問社労士に対して抱く不満は、大きく以下の3つだと言われています。

①IT化が遅れている
②ケアレスミス
③連絡が遅い

1はクラウドサービスそのものと言っていいでしょうし、②はクラウド化により転記ミスや計算ミスをなくすことができます。③はクラウド型のビジネスチャットツールに対応している社労士であれば、コミュニケーションを取るために互いに時間を合わせる必要が少なくなり、連絡がスムーズになります。

社労士は少人数で運営されている事務所も多いため、事務処理能力の不足が、顧問先企業の不満につながりやすい。クラウドサービスの利用で、社労士の事務負担が軽減することは、社労士と顧問先の双方にとってメリットがあるのです。

構成=奥田由意 イラスト=タケウマ 編集=eon-net編集室

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