この記事の目次

【この記事に登場する有識者】
株式会社フライク 代表取締役
大瀧 龍さん
福岡県福岡市出身。富士通グループ会社のSEや営業などを経て、2017年に上場前のfreee株式会社に参画。九州支社長と広島営業所長を兼任し、2019年には西日本の責任者としてマザーズ上場に貢献する。2019年に「3rdコンサルティング株式会社」を創設。システムを活用した中小企業の経営課題解決やIT化、DX化支援に取り組む。SEや営業として現場で培った経験を生かして、フロントオフィスとバックオフィスの両方をカバーし、システム設計・開発から運用提供まで一括して提案できるコンサルティングを追求。 2021年11月に社名を「株式会社フライク」に変更し、新たなスタートを切る。IT普及を目指すコミュニティ「ふくおかクラウドCafe」や、YouTube「システム組立ちゃんねる」なども運営し、地方企業のIT化推進に日々努めている。
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4大オンラインストレージサービスの特徴とおすすめ企業を専門家が解説
オンラインストレージサービスといってもさまざまな製品があるため、どれを選んだらよいのか迷っている方も多いのではないでしょうか?
システム組立屋として企業のDX化をサポートし、オンラインストレージサービスにも精通している株式会社フライク・代表の大瀧龍さんに、おすすめの製品を紹介していただきました。
――おすすめのオンラインストレージサービスを教えてください。
ビジネスでの利用を考えているならば、「Googleドライブ」「OneDrive for Business」「Dropbox Business」「Box」のいずれかがよいでしょう。
それぞれの特徴を解説していきます。下にある選び方のフローチャートもぜひ参考にしてください。
【製品比較表】
製品名 | プラン | 月額料金/1ユーザー | 容量/1ユーザー |
Googleドライブ | starter | 748円 | 30GB |
Standard | 1496円 | 2TB | |
Plus | 2040円 | 5TB | |
Enterprise | 3300円 | 必要に応じて拡張可能 | |
OneDrive for Business | OneDrive for Business (Plan 1) | 594円 | 1TB |
OneDrive for Business (Plan 2) | 1199円 | 無制限 | |
Microsoft 365 Business Basic | 594円 | 1TB | |
Microsoft 365 Business Standard | 1496円 | 1TB |
製品名 | プラン | 月額料金/1ユーザー | 容量/1ユーザー |
Dropbox Business |
Standard | 1375円 | 5TB |
Advanced | 2200円 | 必要に応じた容量 | |
Box | Starter | 605円 | 100GB |
Business | 1881円 | 無制限 | |
Business Plus | 3135円 | 無制限 | |
Enterprise | 4620円 | 無制限 | |
Enterprise Plus | 要問い合わせ | 無制限 |
※料金はすべて税込
※Google ドライブはGoogle Workspaceの製品情報を記載
Google Workspaceユーザーなら「Googleドライブ」
運営会社:Google 公式サイト:https://www.google.com/intl/ja_jp/drive/ |
【有料プランの料金と容量】
プラン | 月額料金/1ユーザー | 容量/1ユーザー |
starter | 748円 | 30GB |
Standard | 1496円 | 2TB |
Plus | 2040円 | 5TB |
Enterprise | 3300円 | 必要に応じて拡張可能 |
※Google Workspaceの製品情報を記載
【特徴】
- Google Workspaceを契約しているユーザーは追加料金なしで利用できる
- Google Workspaceの他機能と連携しやすい
- 権限設定の利便性がBoxやDropbox Businessに劣る
【おすすめ企業】
- Google Workspaceをすでに利用している企業
Googleドライブは、Google Workspaceをすでに利用していてコストを抑えたい企業におすすめです。Google Workspaceのオンラインストレージ機能であるため、追加料金を払う必要がありません。
また、ドキュメント、スプレッドシート、スライド、Google Meetなどの機能と連携しやすいため、業務の効率化にもつながります。
ただし、オンラインストレージ専門のサービスではないので、BoxやDropbox Businessと比べると権限設定の利便性に劣ります。
Office365ユーザーなら「OneDrive for Business」
運営会社: Microsoft 公式サイト:https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/onedrive/onedrive-for-business |
【有料プランの料金と容量】
プラン | 月額料金/1ユーザー | 容量/1ユーザー |
OneDrive for Business (Plan 1) | 594円 | 1TB |
OneDrive for Business (Plan 2) | 1199円 | 無制限 |
Microsoft 365 Business Basic | 594円 | 1TB |
Microsoft 365 Business Standard | 1496円 | 1TB |
【特徴】
- 月額594円/1ユーザー(税込)から利用可能
- Microsoft365のユーザーであれば追加料金なしで利用できる
- 他社システムとの連携はあまりよくない
【おすすめ企業】
- Microsoft365をすでに利用している企業
MicrosoftのオンラインストレージサービスであるOneDrive for Businessは、手頃な価格設定になっており、月額594円/1ユーザー(税込)から利用できます。
Microsoft365をすでに利用している企業であれば、追加コストをかけずに運用可能。もちろん、WordやExcel、PowerPoint、Teamsなどとの連携性に優れるため、Microsoftの製品で統一したい企業におすすめです。
ただし、他社システムとの連携性能はあまり重視されていないため、API連携を積極的に行いたい企業からすると物足りなさを感じるかもしれません。
端末のデータがクラウドに自動で同期できる「Dropbox Business」
運営会社:Dropbox 公式サイト:https://www.dropbox.com/ja/business |
【有料プランの料金と容量】
プラン | 月額料金/1ユーザー | 容量/1ユーザー |
Standard | 1375円 | 5TB |
Advanced | 2200円 | 必要に応じた容量 |
【特徴】
- PCなどの端末にあるローカルデータがクラウドに自動で同期される
- 下位プランでも5TBまで利用できる
- 個人フォルダは管理者でも閲覧できない
【向いている企業】
- 容量の大きいデータのやりとりを頻繁にする企業
- 個人事業主やフリーランス
Dropbox Businessは、下位プランのスタンダードでも1ユーザーあたり5TBまで利用可能。大容量ファイルのやり取りが多い企業などにおすすめです。
また、PCなどの端末にあるローカルデータをクラウドに自動で同期できるので、クラウドへのアップロード漏れの心配がない点もメリットといえるでしょう。Dropboxはもともと個人向けのサービスとしてスタートしているという背景もあり、個人事業主やフリーランスにとっても利用しやすい仕様になっているのが特徴です。
ただし、データーベースの構造が複雑なため、他システムとAPI連携がしにくい点がデメリットと感じるかもしれません。また、個人フォルダは管理者であっても閲覧できないので注意しましょう。
権限設定とAPI連携に優れ大容量の「Box」
運営会社:Box 公式サイト:https://www.box.com/ja-jp/home |
【有料プランの料金と容量】
プラン | 月額料金/1ユーザー | 容量/1ユーザー |
Starter | 605円 | 100GB |
Business | 1881円 | 無制限 |
Business Plus | 3135円 | 無制限 |
Enterprise | 4620円 | 無制限 |
Enterprise Plus | 要問い合わせ | 無制限 |
【特徴】
- アクセス権限を細かく設定できる
- 相手がBoxのアカウントを所持していなくてもデータの共有が可能
- 1500以上の外部システムと連携できる
- 5GBを超えるファイルはアップロードできない
【向いている企業】
- 外部システムと連携して活用したい企業
- 権限設定を細かく行いたい企業
- 大量のデータをクラウド上で管理したい企業
Boxは容量が下位のStarterプランで100GB、その他のプランは無制限で利用できます。ただし、その分他の3製品と比較して料金は高めに設定されています。
アクセス権限を7段階で細かく設定できるほか、Boxのアカウントを持っていない相手でも確認できるため、取引先などとファイルを共有するときも便利です。
また、1500以上の外部システムとの連携が可能である点も大きな特徴でしょう。
デメリットとしては、オフラインでの利用ができないこと、5GBを超えるファイルはアップロードできないこと、公式サイトにおける製品サポートの解説が英語にしか対応していないことなどが挙げられます。
オンラインストレージサービスの選定ポイント
数あるオンラインストレージサービスから自社にあった製品を選ぶには、どのような点に注意すればよいのでしょうか?
製品選定のポイントについて大瀧さんに解説していただきました。
――自社にあったオンラインストレージサービスを選ぶためのポイントを教えてください。
製品選定のポイントは次の4つです。
【オンラインストレージサービスの選定ポイント】
- Google WorkspaceかOffice365を導入しているか
- オフライン利用が多いかオンライン利用が多いか
- 外部システムとAPI連携させるか
- 外部ユーザーとファイル共有をするか
1. Google WorkspaceかOffice365を導入しているか
まずは、すでにGoogle WorkspaceもしくはOffice365を導入しているかどうかが分岐点です。
Google WorkspaceユーザーであればGoogleドライブを、Office365ユーザーであればOneDriveを、追加費用を支払うことなく利用できます。どちらもオンラインストレージサービスに特化したサービスではないものの、平均点以上の性能を備え、料金もお手頃です。
初めてオンラインストレージサービスを導入する企業や、予算をあまりかけられないという企業であれば、まずこの2つを検討してみましょう。
2. オフライン利用が多いかオンライン利用が多いか
オフラインとオンラインどちらでの利用が多いかも重要なポイントになります。
オフラインでの利用が多いのであれば、OneDriveやDropbox Businessが向いています。特にDropbox BusinessはPCにあるデータをクラウドに自動で同期できる機能があるため、ファイルをいちいちアップロードする必要がありません。
また、データは端末にも残しておけるので、ネットがつながっていない環境でも作業できるので便利です。
Boxはもともとクラウドにすべてのデータを保存しておき、必要なデータだけをダウンロードする構造を採用しているため、オフライン環境ではファイルの編集ができず不便です。
3. 外部システムとAPI連携させるか
API連携とは外部システムとデータをシームレスに共有することです。
例えば自社で利用しているSFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)などのシステムとAPI連携すれば、顧客に関するデータや資料の管理がしやすくなり、業務の効率化につながります。
他のシステムと連携を考えているのであれば、1500を超える外部システムに対応しているBoxがおすすめです。
4. 外部ユーザーとファイル共有をするか
ファイル共有はオンラインストレージサービスの主要な機能の1つですが、社内利用が中心の企業と、取引先とファイル共有も行う企業では要件が異なります。
取引先とのやり取りが多い企業であれば、セキュリティが非常に重要です。
また、相手が同じ製品を導入していなくても利用できるかも考慮する必要があります。
例えばGoogleドライブは社外ユーザーとファイル共有すること自体は可能ですが、ファイルの公開範囲を特定の相手に限定するには、相手もGoogleアカウントを持っていなくてはいけません。また、ファイルにパスワードを設定して共有することができないので、どちらかというと社内での共有に向いたサービスです。
社外ユーザーとも安全にファイルを共有したいのでれば、共有リンクにパスワード設定ができるBoxやDropbox Business、OneDriveなどを選ぶとよいでしょう。
オンラインストレージサービスを有効活用するには?専門家が指摘する3つのポイント
オンラインストレージサービスは導入しさえすれば効果が得られるものではなく、適切に運用されて初めて業務の効率化につながるシステムです。
オンラインストレージサービスを有効活用するためのコツについて、大瀧さんに伺いました。
――オンラインストレージサービスを効果的に運用するために重要なポイントは何でしょうか?
次の3点を意識すると、運用がうまくいくでしょう。
【オンラインストレージサービスの運用ポイント】
- フォルダの管理方法やファイル名の付け方のルールを決める
- 権限設定のルールを決めセキュリティ対策をする
- 専門窓口や定期的な勉強会を実施する
1. フォルダの管理方法やファイル名の付け方のルールを決める
まずは、フォルダの管理方法やファイルの命名ルールを決定し、全員がそれを順守することが重要です。
例えば、フォルダを作成するにしても、年度別、プロジェクト別、顧客別など、いろいろな分け方ができますよね。メンバーや部署ごとにやり方が異なると、必要なファイルにたどりつけなくなってしまいます。
ファイル名も同じです。「○○の見積書」といったファイル名だと、どれが最新版なのかが一見しただけではわからず、1つずつ確認しなくてはいけなくなってしまい非効率です。
例えば、上の図のように作成した日にちを冒頭に入れるなど工夫すると、どれが最新のものなのかすぐに判断がつきやすくなるでしょう。
2. 権限設定のルールを決めセキュリティ対策をする
「誰がどのファイルを編集できるのか」「アクセス制限をかけるファイルの範囲はどうするのか」など、権限設定についてもルール化しておきましょう。
機密情報に関わる資料であれば、閲覧できる人物を厳しく制限しなくてはいけません。反対に、全従業員が頻繁に業務で利用するファイルに閲覧制限をかけてしまうと、許可の申請や承認に手間がかかり業務の進行の妨げにもなります。
また、メンバーの移動や組織変更が多い企業であれば、管理者が定期的にアクセス権限の状態を確認しておくことも大切です。
3. 専門窓口や定期的な勉強会を実施する
運用ルールを最適化していくための取り組みも必要です。
問い合わせ窓口を設けたり、定期的な勉強会を開いたりして、運用における課題を洗い出し改善していきましょう。
また、セキュリティポリシーの浸透やセキュリティ事故の防止に向けた研修を実施するのも効果的です。

個人利用なら無料で十分?4大オンラインストレージサービスの無料プランを紹介
無料プランは、容量や機能に制限が設けられているケースがほとんどですが、個人で利用する場合や利用目的によっては不便なく利用できる場合もあります。
最後に、4大オンラインストレージサービスの無料プランの特徴を解説します。
4大オンラインストレージサービスの無料プランの特徴
【無料プランの容量の上限】
ストレージ容量上限 | ファイルアップロード上限 | |
Googleドライブ | 15GB | ― |
OneDrive for Business | 5GB | ― |
Dropbox Business | 2GB | ― |
Box | 10GB | 250MB |
【Googleドライブの無料プランの特徴】
- Googleのアカウントがあれば登録不要で使える
- 2段階認証や閲覧制限の設定、データ暗号化に対応
【OneDrive for Businessの無料プランの特徴】
- Windows PCの写真、ドキュメント、デスクトップのフォルダを自動でバックアップできる
- モバイルアプリ(スマホ)からファイルの共有や編集が行える
【Dropbox Businessの無料プランの特徴】
- 端末のデータがクラウドに自動で同期される
- 30日間は削除したデータの復元が可能
【Boxの無料プランの特徴】
- 法人向けサービスのためセキュリティ性に優れている
- Officeファイルを直接追加できる
- 多数の外部サービスと連携が可能
まとめ
代表的なオンラインストレージサービス4製品の特徴や、製品選定のポイントを紹介しました。
DXに取り組む第一歩として、オンラインストレージの導入は有効です。導入に失敗しないためにも、この記事でお伝えしている「オンラインストレージの選定ポイント」や「オンラインストレージの有効的な活用法」をぜひ参考にしてください。
製品によって向いている企業が異なるため、既存サービスとの親和性やAPI連携、ファイル共有のしやすさなどに注意して、自社にあったものを選びましょう。