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無料BIツールと有料BIツールの差を比較
BIツールの中には、無料で使える製品と有料の製品があります。データ分析という意味では、実は有料も無料も機能面ではあまり大きな差はありません。
違いが出てくるのは、「使いやすさ」の面。具体的に、有料版と無料版では、以下の4つの点で差が出やすいため注意が必要です。
【無料のBIツールを導入する際の注意点】
- 初期設定やAPI連携にソースコードの知識が必要
- ユーザーサポートが受けられない
- 導入のセキュリティ要件を満たさない場合がある
- 分析できるデータ量に上限がある
1.初期設定やAPI連携にソースコードの知識が必要
BIツールは、データを取得するために他システムとの連携(API連携)が初期設定作業として必要になります。有料版ならCRM、SFAなどとの連携もドラッグ&ドロップなどで簡単に設定できますが、無料版では設定やAPI連携のためにソースコードの書き換えが必要になることが少なくありません。ソースコードの知識がある程度必要になるため、ITの知識がない人ではかなり難しい作業になるでしょう。
2.ユーザーサポートが受けられない
無料のBIツールでは、ユーザーサポートを受けられない製品がほとんどです。このため、使い方がわからない場合は、自分で調べて自力で解決しなくてはいけません。ビジネスツールの中でも、BIツールは導入や運用の難易度が高いツールです。操作方法を調べるだけでもそれなりの時間がかかります。行き詰まって使わなくなってしまうことになりかねないので注意しましょう。
3.導入のセキュリティ要件を満たさない場合がある
社内で保有する業務データの中には、機密性の高いデータも含まれているため、ツールのセキュリティ機能を重視する会社もあるでしょう。しかし、無料のBIツールの多くは、セキュリティ関連情報の詳細が公開されていません。これは、無料のBIツールは個人使用をメインとしており、会社で使うことを想定していない製品が多いためです。有料製品はISO取得など第三者評価の情報が公開されていることが一般的ですが、無料製品はそれがないのです。導入前に会社のセキュリティコンプライアンスに違反しないか、確認しましょう。
4.分析できるデータ量に上限がある
無料のBIツールには、アクセスできるユーザー数や、分析できるデータ量が限定されているものもあります。無料のBIツールを選ぶ際は、アカウント数やデータ制限には特に注意をしましょう。企業規模の拡大や長期間にわたってBIツールを使い続ける可能性があるなら、無料版から有料版にアップグレードしやすい製品を導入するのもひとつの方法です。
編集部おすすめ!無料で使えるBIツール2選
早速、編集部がおすすめする無料のBIツールを紹介しましょう。
以下で紹介する2製品は、BIツールとしてメジャーなため利用者も多いので、使い方についてもインターネット上に情報があったり、書籍も販売されています。独学で使い方を勉強できるので、初めてBIツールを導入するならおすすめです。
Microsoft製品との連携重視なら「Microsoft Power BI Desktop」
【製品情報】
製品名 | Microsoft Power BI Desktop |
運営会社 | Microsoft |
公式サイト | https://powerbi.microsoft.com/ja-jp/desktop/ |
【Microsoft Power BI Desktopの特徴】
- Office製品との親和性が高く、Excelファイルをそのままソースに使える
- 専門的な知識なしでデータ分析が行えるセルフサービス型のBIツール
- 「Microsoft 365 E5」を契約済なら有料版の「Power BI pro」を追加料金なしで使える
MicrosoftのBIツール「Microsoft Power BI」シリーズの1つ。Microsoftが提供するだけあってExcelでBIツールを利用できるのが強みです。Salesforce製品などとの連携も可能で、データの変換・統合など加工機能も優秀です。
有料版である「Power BI pro」と同様のデータ分析を行えますが、分析結果をクラウドストレージを使ってほかのメンバーと共有することはできません。クラウドストレージでメンバーと共有するには有料(月額1090円/ユーザー、税込)の「Power BI pro」を使いましょう。ただし、同製品は、Microsoft Officeの大企業向けプラン「Microsoft 365 E5」に含まれており、追加料金なしで利用できます。会社によってはOfficeソフトとして導入しているので確認しましょう。
Googleアナリティクス分析に強い「Googleデータポータル」
【製品情報】
製品名 | Googleデータポータル |
運営会社 | |
公式サイト | https://marketingplatform.google.com/intl/ja/about/data-studio/ |
【Googleデータポータルの特徴】
- Googleアナリティクスとの連携がスムーズでドラッグ&ドロップで使える
- Googleサービスを業務で利用しているユーザーに特におすすめ
- 複雑なデータ処理を行うとツールの動作が遅くなる可能性あり
Googleが提供しているBIツールで、Webアクセス解析の定番ツールGoogleアナリティクスや、Google広告との連携がスムーズに行えるのが強みです。ほぼドラッグ&ドロップ操作だけでデータ分析を実行に移せるので、Googleサービスをすでに利用しているなら特におすすめ。ただし、複数のソースから取得したデータを統合して分析するような負荷のかかる処理はやや苦手で、ツールが快適に動作しないことがあるので注意しましょう。
OSS(オープンソース)型BIツール7選
無料で使えるBIツールを探しているなら「OSS(オープンソース)型のBIツールを使う」という選択もあります。
オープンソースとは、プログラムの中身に当たるソースコードが一般公開されているソフトウェアのこと。ソースコードを書き換えればカスタマイズして使えるという自由度がありますが、運用にはそれなりの知識やスキルが必要です。
数あるオープンソース型のBIツールの中で、比較的有名で開発元も信頼できるツールを7種類、ご紹介します。
基本機能も拡張性も高い「Pentaho(ペンタホ)」
【製品情報】
製品名 | Pentaho(ペンタホ) |
運営会社 | 日立ヴァンタラ |
公式サイト | https://www.hitachi.co.jp/products/it/bigdata/platform/pentaho/index.html |
【Pentahoの特徴】
- データ取り込みから分析レポート作成までドラッグ&ドロップで簡単操作できる
- 運営会社が日本企業で、日本語にも対応している
日立製作所系列の日立ヴァンタラが提供するオープンソース型BIツールです。業務データ、センサーデータ、SNSなどのデータを統合して複数の観点から分析可能。オープンソースでありながら、プログラム言語を使わなくても開発ができ、日本語にも対応している点も強みです。ただし、無料プランの「コミュニティ・エディション(CE)」では保守とサポートが受けられません。サポートを受けるには有料の「エンタープライズ・エディション(EE)」を契約する必要があります。
ダッシュボード機能に特化「Grafana(グラファナ)」
【製品情報】
製品名 | Grafana(グラファナ) |
運営会社 | Grafana Labs |
公式サイト | https://grafana.com/grafana/ |
【Grafanaの特徴】
- ダッシュボード機能に特化しており、動作が軽快
- 30種以上のデータソースと連携可能
データを可視化するダッシュボード機能に特化しているBIツールです。データ連携機能が充実しているのもポイントで、30種以上のデータソースと接続可能。ただし、データの収集機能はないので、単体で使うのではなく別のツールと組み合わせて使うことが前提です。また、日本語にも対応していないので、使いこなすにはある程度の技術力が必要になるでしょう。
導入も運用もシンプル操作でOK「Metabase(メタベース)」
【製品情報】
製品名 | Metabase(メタベース) |
運営会社 | Metabaseプロジェクト |
公式サイト | https://www.metabase.com/ |
【Metabaseの特徴】
- ダッシュボード機能に特化しており直感的に使えるシンプルなUI
- 日本語など多言語に対応
データを可視化するダッシュボード機能に特化した米国発のBIツールです。シンプルで洗練されたUIで、ダッシュボードはドラッグ&ドロップの簡単操作で作成可能。米国発のBIツールですが、日本語にも対応している点もポイントです。データ収集機能はないので、別のツールを組み合わせて使うことが前提になります。Google AnalyticsやBigQueryなどさまざまなツールとの連携が可能です。
Elastic製品との組み合わせでデータを可視化「Kibana(キバナ)」
【製品情報】
製品名 | Kibana(キバナ) |
運営会社 | Elastic |
公式サイト | https://www.elastic.co/jp/kibana/ |
【Kibanaの特徴】
- Elastic製品と組み合わせてビジュアルに優れた各種ダッシュボード作成が可能
- 日本語化も可能だが、ソースコードの書き換えが必要
ビッグデータ解析で知られるElastic社のオープンソース型のBIツール。表示可能なグラフの種類が多く、特にビジュアライズ(可視化)機能に強みがあります。同社製品のデータベースである「Elasticsearch」にデータを格納し、情報収集ツールの「Logstash」でデータ収集を行い、Kibanaで可視化するという流れは、ログ分析基盤としては定番の流れです。ダッシュボード作成はドラッグ&ドロップで可能。日本語化も可能ですが、ソースコードを書き換える必要があります。
高速で大量のデータ分析が可能「Graylog(グレイログ)」
【製品情報】
製品名 | Graylog(グレイログ) |
運営会社 | Graylog |
公式サイト | https://www.graylog.org/ |
【Graylogの特徴】
- ログ収集・管理機能が優秀
- 大量のデータを素早く収集し、高速で分析できる
ドイツ発祥のオープンソース・ログ管理ツールで、IoT機器やコンピュータなどが出力する大量の活動記録(ログ)やデータを収集して管理するツールです。大量のログデータを集中管理して高速で分析できるので、セキュリティ監視を目的としたログ管理でも利用されることが多いです。もちろん、収集したデータはグラフや表でビジュアル化可能なのでデータ活用にもすぐに役立てられます。無料で使えて、しかも多機能ですが、日本語には未対応です。
連携ツールの豊富さで選ぶなら「Redash(リダッシュ)」
【製品情報】
製品名 | Redash(リダッシュ) |
運営会社 | Redash |
公式サイト | https://redash.io/ |
【Redashの特徴】
- 連携できるツール数はオープンソース型BIツールとしては最多クラス
- SQLなどデータベースシステムやソースコードの知識が必須なのでハードルは高め
MySQLをはじめGoogle BigQuery、Oracleなど、連携できるツールの数はオープンソースでは最多クラスです。データ収集や分析を設定にはソースコード記述が必須になるので、利用のハードルは高め。なお、有料のクラウドサービスもありましたが、2021年11月で廃止されたため、現在はオープンソース版のみのリリースとなります。
ノーコードでOK「Apache Superset(アパッチスーパーセット)」
【製品情報】
製品名 | Apache Superset(アパッチスーパーセット) |
開発会社 | Airbnb |
公式サイト | https://superset.apache.org/ |
【Apache Supersetの特徴】
- 作成できるグラフが多く、ダッシュボードも扱いやすい
- ソースコードの知識がなくても操作できる
Airbnbが開発したBIツール。ノーコードを掲げており、クリックやドロップ&ドラッグで操作ができるようになっています。折れ線グラフや円グラフだけでなく、扱いやすいダッシュボードもあり、視覚性に優れた分析結果を出力できるのが特徴。Google BigQuery、MySQL、Oracleなど大抵の主要なデータベースと接続可能で、データ処理の負荷を減らす工夫もなされているので大量のデータ分析でも軽快に動作します。日本語にも部分的に対応しています。
まとめ
無料のBIツールであっても、使いやすい製品が次々と登場しています。BIツールに興味があるなら、まずは勉強のつもりで無料版のツールを利用してみましょう。各種製品ごとにクセがあるので、最初はいくつかの製品を並行して使ってみるのも手です。本記事で紹介したBIツールを参考に、気になる製品があればぜひチェックしてみてください。
BIツールがどのようなツールであるか、また、導入メリットについては、以下の記事で詳しく解説していますので、BIツールについてより詳しく知りたい方はご参考ください。