【この記事に登場する有識者】
株式会社キュービック 執行役員CTO
加藤彰宏

楽天市場RMSの開発責任者として開発に従事後、スターフェスティバル株式会社へ参画し、CTOに就任。その後、同社取締役(2015年11月〜2017年9月)と「ごちクル」事業長(2016年7月〜2017年6月)を兼任。2018年5月より株式会社Plus10Percent 代表取締役として、複数企業の技術顧問や技術コンサルティングを担当。2018年よりキュービック技術顧問、2021年より同社執行役員CTO。

無料のファイル転送サービスを仕事で使わない方がよい理由

ファイル転送サービスは有料のものだけでなく、FirestorageやGigaFile便のように無料で利用できるサービスもあります。無料サービスと有料サービスは何が違うのでしょうか?

ファイル転送サービスに詳しい、株式会社キュービックCTOの加藤彰宏に話を聞きました。

無料のファイル転送サービスを利用するデメリット

企業でセキュリティを担当している方から、「ファイル転送サービスは無料のものでも問題ないか」という質問をよく受けます。もちろん無料サービスでもファイル転送自体は可能ですが、仕事での利用はあまりおすすめできません。

──なぜ、無料のファイル転送サービスはおすすめできないのですか?

【無料のファイル転送サービスを利用するデメリット】

  • 情報漏えいのリスクが高まる
  • 突然サービスが終了する恐れがある
  • 詳細なログが終えない
  • 企業としての信頼度が下がる

無料のファイル転送サービスは、セキュリティにかけられるコストが限られてしまうため、情報漏えいリスクが高まります。たとえ暗号化などの措置が取られていたとしても、有料サービスと比べてセキュリティの質が劣ることは理解しておかなくてはいけません。

また、無料サービスでは、突然サービスが終了してしまいアクセスができなくなったり、詳細なログを追えずトラブル発生時に原因を追求できなかったりすることもあります。

さらに、無料のファイル転送サービスを使っていると、セキュリティに対する意識が低い企業という印象を相手に与えてしまい、信用を失ってしまう可能性さえあります。

これらの理由から、企業にとっての機会損失にもつながる恐れがあるため、無料のサービスを仕事で利用することはおすすめできません。現在、クラウドでデータ管理をしているなら、ファイル転送サービスではなく、オンラインストレージの利用を検討してみるとよいでしょう

 ビジネスにおいて、データの情報漏えいに対する規制が今後ますます厳しくなっていきます。自社サーバーでデーターを管理すること自体が情報漏えいのリスクになりうる場合もあるので、クラウドでのデータ管理も検討してみるとよいでしょう。

ファイル転送サービスよりオンラインストレージが優れている理由

仕事で利用するのであれば、ファイル転送サービスよりオンラインストレージの方がおすすめだと加藤CTOは話します。その理由を聞きました。

オンラインストレージの導入を推奨する理由

──オンラインストレージとはなんですか?

クラウド上で利用できるディスクドライブのことで、パソコンのフォルダのようにデータを保存できます。オンラインストレージ上に保存したデータの閲覧・ダウンロード・編集は、アクセス権限を与えられたユーザーだけが行えます。

──ファイル転送サービスより、オンラインストレージの方がおすすめである理由を教えてください。

おもに下記の2点です。

【オンラインストレージを利用するメリット】

  • データの送信から保管までが一元で行える
  • セキュリティ上のリスクが減る

データの送信から保管までが一元で行える

オンラインストレージでは、データの送受信や管理がすべてクラウド上で行えます。企業の重要な情報を一元管理できるので、管理工数が削減できます。アクセス権限を付与すれば誰でもファイルを閲覧をできるので、データ共有も簡単です。

セキュリティ上のリスクが減る

ファイル転送サービスを使いメールでデータを送受信するよりも、セキュリティ上のリスクが減ります。

また、「誰がファイルをアップロードし・誰が編集やダウンロードをしたか」のログ(履歴)が残るので、情報漏えいやウイルス感染などのトラブルが発生した場合に、原因の解明がしやすくなります。

おすすめのオンラインストレージ製品

──オンラインストレージを導入するなら、どの製品がおすすめですか?

Boxがおすすめです。

boxトップ画面
出典:「Box」公式サイト https://www.box.com/ja-jp/home

【料金プラン】

StarterBusinessBusiness PlusEnterprise
月額料金(1ユーザー)550円1980円3300円4620円
月額料金(100ユーザー)要問合せ要問合せ要問合せ要問合せ
※ボリュームディスカウントあり
※料金は全て税込

【特徴】

  • セキュリティレベルが高い
  • ファイル管理が容易

「Box」は国家機密レベルのデータ管理にも利用されるほど、豊富な導入実績があります

また、データ管理がしやすいのも特徴で、社外秘のデータを共有ができないよう、管理者側で設定ができます。

有料のファイル転送サービスの選び方

ここまで説明したとおり、仕事で利用するならば、ファイル転送サービスではなくオンラインストレージをおすすめします。しかし、取引先との関係でファイル転送サービスを使わざるを得ないといった企業もあるでしょう。

そうした場合、ファイル転送サービスはどのようなポイントに注意して選ぶとよいのでしょうか? 詳しく解説します。

──ファイル転送サービスを選ぶ際は、どのような点に気をつけるとよいのでしょうか?

下記の3つのポイントを確認することが大事です。

【ファイル転送サービス選定のポイント】

  1. セキュリティ
  2. 付随する機能の網羅性
  3. 料金

1.セキュリティ

まず重視したいのがセキュリティです。

仕事では顧客情報や会社の機密事項など重要な情報を多く扱うので、セキュリティ対策がしっかりしていない製品を使うわけにはいきません。

セキュリティを評価するときは、以下を確認しましょう。

【セキュリティの評価基準】

  • 導入実績
  • サーバーのセキュリティ
  • ログが残るか

導入実績

導入実績といわれると、導入社数をイメージする方が多いかもしれません。もちろん導入社数も重要な指標の1つですが、セキュリティをより適切に評価するためには、「どんな企業に選ばれているか」を確認することが大事です。

──なぜ導入企業を確認することが大事なのでしょうか?

一般的な企業であれば、導入にあたり必ずセキュリティチェックを行います。特に大手企業ほど求めるセキュリティ水準は高くなる傾向にあります。裏を返せば、大企業で導入されている製品=厳しいセキュリティチェックをクリアしたクリアした製品だといえます。また、自社と同じ業種の企業が導入しているのであれば、業務上必要なセキュリティ基準は満たしている可能性が高いと考えられます。

サーバーのセキュリティ

ファイルを保存するサーバーが、セキュアかどうかを確認しましょう。サーバーの所在、暗号化の強度、高度なセキュリティ対策がなされているか、などに注目してください。公式サイトを見て疑問が残る場合は、直接問い合わせてみるのがよいでしょう。

ログが残るか

データの送受信に関するログが残るかどうかも大事なポイントです。ログが残っていれば、万一情報漏えいなどが起きた場合に、その原因を追究できます。また、上場企業や上場を目指している企業なら、監査対応でも役立ちます。

2.付随する機能の網羅性

2つ目のポイントになるのが、付随する機能の網羅性です。

ファイル転送以外のおもな機能としては、以下のものが挙げられます。

【おもな機能】

  • ストレージ機能
  • ワークフロー機能
  • 期間制限機能
  • 誤送信防止機能

ストレージ機能

クラウド上にデータを保存しておく機能です。万一転送中にデータが消えてしまっても、ストレージに残っていれば復元できます。

ワークフロー機能

役職者や担当者の承認を得ないと、データの送信が行えないように設定できます。違うデータを送ってしまったり、宛先を間違えたり、といったミスを予防できます。

期間制限機能

データをダウンロードできる期間を指定できる機能です。

ダウンロードできる期間を短く設定すれば、その分情報漏えいのリスクが減ります。ダウンロード期間を柔軟に設定できれば、状況に応じて安全にデータを共有できます。

誤送信防止機能

ダウンロードの際にパスワードの入力を求める機能や、誤送信があった際にパスワードの通知を行わずファイル公開を取り消す機能などがあります。

製品によって搭載されている機能は異なるため、まずは自社にとって必要な機能を洗い出しましょう

3.料金

料金も大事な選定ポイントです。

ほとんどの製品は複数のプランが用意されており、利用できるユーザー数や送信できるデータの容量が変わります。ファイル転送サービスは、取引先との関係がある営業部やマーケティング部など、使用する人が限られるので、ユーザー数や想定されるデータの容量を整理したうえで、予算内に収まる製品とプランを選びましょう。

使用頻度が高い企業でならば、従量課金制よりも月額制の製品がおすすめです。


──企業によって、必要な容量が異なりそうですね。

動画や画像を扱うデザイン系の企業や、ファイルのやり取りが多い不動産では、大容量のファイル転送サービスが望ましいでしょう。1つの目安ですが、2時間の高画質の映画を転送するのにおよそ20GBの容量が必要です。容量の大きいデータを頻繁にやり取りするようならば、容量無制限の製品やプランを選択することをおすすめします。

反対に、大容量のデータ転送をしない企業やサービスの利用頻度が少ない企業であれば、10GB程度の容量で十分です。

ファイル転送サービス3製品を比較

ここまでに説明したファイル転送サービス選びのポイントをもとに、編集部で3製品をピックアップしました。それぞれの特徴や料金プランを紹介するので、サービスを検討する際の参考にしてください。

【製品比較表】

GigaCCオフィス宅ふぁいる便データ便
セキュリティ
ワークフロー機能
ストレージ機能
ファイル保存の期間設定
誤送信防止機能
送信履歴の確認
有料プラン料金/100ユーザー14万4100円〜1万8700円〜3万3000円〜
※料金はすべて税込 
※セキュリティの◎◯は編集部評価
※機能◯ーは編集部評価

セキュリティ重視なら「GigaCC」

「GigaCC」トップページ
出典:「GigaCC」公式サイト https://www.gigaccsecure.jp/
GigaCC
公式サイト:https://www.gigaccsecure.jp/  
運営会社:日本ワムネット株式会社

【製品評価】

セキュリティ機能の網羅性料金
※編集部評価

【GigaCC ASP 料金プラン】

  Standardプラン Advancedプラン Premiumプラン
初期費用 5万5000円
月額料金(100ユーザー) 14万4100円 17万1600円 19万300円
容量(100ユーザー) 100GB 100GB 100GB

※料金はすべて税込

【GigaCC OKURN 料金】

初期費用5万5000円
月額料金 10ユーザー2万6950円
※料金はすべて税込

【GigaCCのおすすめポイント】

  • 管理者機能が充実
  • 金融機関や行政機関での導入実績

セキュリティに強みを持つのが「GigaCC ASP」「GigaCC OKURN」です。ウイルスチェック機能やID/パスワード認証、SSL/TLS暗号化通信など、ファイルの送受信を安全に行うための機能が備わっています。みずほ銀行、埼玉県庁、東京大学大学院など、セキュリティに対する評価が厳しい金融機関や自治体でも導入されている製品です。

機能の網羅性を重視するなら「オフィス宅ふぁいる便」

「オフィス宅ふぁいる便」トップページ
出典:「オフィス宅ふぁいる便」公式サイトhttps://www.ogis-ri.co.jp/pickup/takufile/
オフィス宅ふぁいる便
公式サイト:https://www.ogis-ri.co.jp/product/takufile.html  
運営会社:株式会社オージス総研

【製品評価】

セキュリティ機能の網羅性料金
※編集部評価

【料金プラン】

  スタンダード プロフェッショナル エンタープライズ
初期費用 2万2000円
月額料金(100ユーザー) 1万8700円 3万7400円 5万8300円
容量 10GB 10GB 1000GB

※料金はすべて税込

【オフィス宅ふぁいる便のおすすめポイント】

  • 豊富な機能性
  • 24時間365日の有人監視

オフィス宅ふぁいる便は多機能なファイル転送サービスです。

データ送信時の承認者を設定できる「簡易ワークフロー機能」、データが送信されると上長にメールで通知が届く「ファイル送信通知機能」もあります。

また、送信データを保管し閲覧できる「送信ファイルアーカイブ機能」などが備わっています。データが保管されている領域とは別の、送信ファイル専用の保管サーバーにファイルがアーカイブされます。送信ミスやファイルの誤削除、データの不正持ち出しなどを予防するとともに、監査対応にも役立つ機能です。

セキュリティについては、WAF・IPS/IDS・Firewallなど、不正アクセスやネットワーク攻撃を防御する仕組みが整えられており、さらに、24時間365日体制で有人監視がされています。

料金重視なら「データ便」

「データ便」トップページ
出典:「データ便」公式サイト https://www.datadeliver.net/
データ便
公式サイト:https://www.datadeliver.net/
運営会社:株式会社ファルコ

【製品評価】

セキュリティ機能の網羅性料金
※編集部評価

【料金プラン】

  ライト/フリープラン ビジネスプラン(送信機能のみ) ビジネスプラン(送受信)
初期費用 無料
月額料金(100ユーザー) 無料 3万3000円 5万5000円
容量 500MB/2GB 無制限 無制限

※料金はすべて税込

【データ便のおすすめポイント】

  • 有料プランでも料金が安い

会員登録が不要で最大500MBまでのデータを送信できるライトプランと、会員登録をすれば1度に2GBまで送信可能なフリープランは、どちらも無料で利用できます。また、データ容量が無制限のビジネスプランも、1ユーザーあたり月額550円(税込)と、お手頃な料金設定になっています。

備わっている機能はシンプルですが、有料プランでは高性能ファイアウォールやSSL暗号化通信、ダウンロードパスワード設定などのセキュリティ対策がされている製品です。

やはり無料プランではセキュリティ面で不安が残るので、有料プランを利用することをおすすめします。

まとめ

ビジネスにおいて、取引先とのデータファイルのやり取りは欠かせません。無料のファイルサービスはセキュリティ上のリスクがあるため、オンラインストレージか有料サービスの利用を検討しましょう。

セキュリティやデータ管理のしやすさはオンラインストレージが優れていますが、業務上どうしてもファイル転送サービスを利用しなくてはいけない場合は、本記事で紹介したポイントを参考に、自社に合ったものを検討してください。

上に戻る