【この記事に登場する有識者】
メリービズ株式会社 オンボーディング コンサルタント
長谷 龍一さん

北海道大学理学部卒。マーケティング支援会社(東証マザーズ上場)の営業・新規事業企画を経て、経理部門にて全社会計システムの総移管プロジェクトや業務改善プロジェクトに従事。2018年メリービズ株式会社に入社し、経理コンサルタントとしてアウトソーシングの導入コンサルティングを多数実施。従業員1桁台のベンチャー企業から、東証一部上場企業まで、売上・入金管理・経費精算・月次決算業務のサポートを幅広く担当。現在はコンサルティング部門を統括。「経理の痛みを和らげる」をモットーとし、業務に従事。

経費精算システム選びの際にチェックすべきポイント

すでに多くの経費精算システムがある中で、自社の業務に合った製品を見つけるためにはどういった点に注意すればよいのでしょうか? 中小企業から大企業まで、経費精算オペレーションのコンサルティング経験が豊富な長谷さんに伺いました。

──経費精算システムを検討する際にチェックすべきポイントを教えてください。

重要なポイントはおもに4つあります。

【経費精算システム選びの4つのポイント】

  1. 会計ソフトとの連携
  2. クレジットカードとの連携
  3. ワークフロー機能の有無
  4. 利用料金と料金制度

チェックポイント1:会計ソフトとの連携

【要チェック企業】

・すでに会計ソフトを運用している企業
・会計ソフトと経費精算システムの導入を同時に考えている企業

──会計ソフトとの連携は、なぜ重要なのですか?

会計ソフトと連携できれば、経費データを自動で会計ソフトに取り込めるからです。それにより、帳簿への転記や、決算・税務処理などの経理作業がシームレスに行えるようになります。

連携がうまくできないと、手入力が発生したり、CSVデータを加工してからで会計ソフトに取り込んだりなど、余計な作業が発生します。

──会計ソフトとの連携で注意すべきことはありますか?

すでに会計ソフトを運用している企業の場合は、そのソフトと連携がスムーズにいくかどうかをチェックする必要があります。

クラウド型の会計ソフトの導入も同時に考えている場合には、同シリーズの製品を導入すると連携がスムーズです。会計ソフトに準じて経費の科目(勘定科目)を設定することで、経費精算システムのデータが自動的に会計ソフトに引き継がれます。

クラウド型会計ソフトの中には経費精算機能が備わっている製品もあります。ただし、経費精算専用のシステムと比べて、機能が限定されるものが多いです。自社の要件にどれだけ対応できるかを見極める必要があります。

運用している会計ソフトがオンプレミス型の場合は、CSV連携でデータを移行するケースが多くなります。その場合は、会計ソフトに取り込む前に、どの程度データを加工する必要があるのかを確認しましょう。ちょっとした調整なら問題はありませんが、手間がかかりすぎるようでは連携させる意味が薄れてしまいます。

チェックポイント2:クレジットカードとの連携

【要チェック企業】

・経費の支払いに法人カードやコーポレートカードを利用している企業
・法人カードやコーポレートカードの導入を検討している企業

──クレジットカードとの連携はなぜ大事なのでしょうか?

法人カードと連携できれば、経費の立替をなくせます。また、使った経費は自動でシステムに反映されるので、精算書を作る必要もありません。

従業員に法人カードを利用させると、無駄に経費を使うおそれがあると敬遠する企業もあります。法人カードには利用額の上限を設定できるものがあるので、そのようなカードと連携できる経費精算システムを検討するとよいでしょう。

従業員は立替が不要になりますし、経理担当者は立替金の支払い業務がなくなりますから、どちらにとっても有益です。

チェックポイント3:ワークフロー機能の有無

【要チェック企業】

・申請件数や承認ステップの多い企業
・ワークフローシステムを導入していない企業

──経費精算システムにワークフロー機能が必要な理由を教えてください。

ワークフロー機能がないと、経費精算にともなう申請・承認の工程を自動化できないからです。

多くの企業では、経費の申請に対し、いくつもの承認ステップを踏みます。経費の科目によって、承認経路が異なる場合もあります。

ワークフロー機能がないと、申請書をプリントアウトして承認者に回さなければならないので、工数と時間がかかります。また、承認が誰まで完了しているのかを把握しにくいので、管理も大変です。

すでに別のワークフローシステムを導入している場合は、導入を検討している経費精算システムとの連携をチェックしてください。両製品の連携がうまくいかないと、経費精算業務がスムーズに運ばなくなるおそれがあります。

チェックポイント4:利用料金と料金制度

【要チェック企業】

・従業員数の変動が大きい企業

──利用料金については、どのようにみるとよいのですか?

利用料金は、経費システムを導入することで、経理に関わる業務全体の負担を、どれだけ軽減できるのかという視点が大事です。

逆の見方をすれば、月々の経費の件数が少なく、科目や金額があまり変わらないような小規模の企業ならば、毎月料金を払ってまで経費精算システムを導入する必要性は低いといえます。

まずは、必要な機能を洗い出した上で自社に合いそうな製品を絞り込み、料金を比較するとよいでしょう。

──料金制度には「ユーザー数課金制」と「月額制」がありますね。

多くの製品ではユーザー数課金制が採用されており、ユーザー1人あたりの利用料金が設定されています。ただし、月額制でもユーザー数によって料金が変わるものもあります。例えば、「楽楽精算」は、月額料金が3万3000円(税込)からとなっており、従業員数によって変動します。この場合、従業員数が少ない企業や、人員の入れ替わりが多い企業だと、1人あたりのコストが高くなってしまう可能性があります。

従業員規模や経費精算の頻度、必要な機能を整理したうえで、料金を見ていくとよいでしょう。

専門家おすすめの経費精算システム4製品を比較

ここからは、長谷さんがおすすめする4製品を紹介します。

【おすすめ4製品の比較表】

 ジョブカン経費精算楽楽精算MoneyForward クラウド経費Concur Expense
OCR機能※1
ワークフロー機能
API連携できるクラウド型会計ソフト勘定奉行クラウドPCA会計DXクラウドなど要問い合わせ要問い合わせ
クレジットカード提携先三井住友カード
など 
American Express International, Inc.
三井住友カード
JCB
など
三井住友カード
クレディセゾン
三菱UFJニコス
など
American Express International, Inc.
三井住友カード
クレディセゾン
JCB
など
交通系ICカード読み取り
出張関連機能
電子帳簿保存法対応
スマートフォン対応
初期費用なし11万円なしなし
月額利用料(有料プラン)440円/1ユーザー3万3000円〜(ユーザー数で変動)基本料金+220円/1ユーザー※23万1900円〜(Expense Standardプラン)  
国内導入社数不明※シリーズ累計10万社以上(2021年6月時点)7000社以上(2020年11月時点)不明1100社以上(累計企業グループ数。2021年6月時点)
※編集部調べ
※料金は全て税込

※1 領収書などの画像から必要項目を読み取り、テキストデータに自動変換する機能
※2 31名以上の場合は要問い合わせ

1. 機能がシンプルで使いやすく、料金もお手頃な「ジョブカン経費精算」

ジョブカン経費精算キャプチャ
出典:「ジョブカン経費精算」公式サイト https://ex.jobcan.ne.jp/
ジョブカン経費精算
公式サイト https://ex.jobcan.ne.jp/
運営会社 株式会社 DONUTS

【利用料金】

初期費用なし
中・小規模の企業(従業員500名未満)月額440円/1ユーザー
(ジョブカンワークフローと併用:月額660円/1ユーザー)
大規模企業(500名以上)要見積もり
無料お試し期間30日間
※編集部調べ
※料金は全て税込

【おすすめ企業】

初めて経費精算システムを導入する企業

ジョブカン経費精算は、機能がシンプルで扱いやすく、料金も月額440円/1ユーザー(税込)と、お手頃な料金設定になっています。

同シリーズの「ジョブカンワークフロー」を併用すると、ワークフロー機能を強化できるうえ、割引料金が適用されるのも特徴です。

API連携が弱く、他のシステムとデータを共有する際には手間がかかります。領収書を読み取るOCR機能がないので、経費精算の件数が多くなるほど従業員の負担が増えてしまう点はデメリットといえるでしょう。

2. 会計ソフトとの連携に優れた「楽楽精算」

楽楽精算キャプチャ
出典:「楽楽精算」公式サイト https://www.rakurakuseisan.jp/
楽楽精算
公式サイト https://www.rakurakuseisan.jp/
運営会社 株式会社ラクス

【利用料金】

初期費用11万円
月額利用料3万3000円~(ユーザー数に応じて変動)
無料トライアルあり
※編集部調べ
※料金は全て税込

【おすすめ企業】

経費の管理に加え、分析も行いたい企業

会計ソフトとの連携が強く、クラウド型では4製品とAPI連携が、オンプレミス型だと30製品以上とCSV連携が可能です。

電子帳簿保存法に対応しているほか、事前に設定したルールに反する申請内容に警告を出すチェック機能なども備わっており、内部統制の強化にも役立ちます。

導入の際に初期費用として11万円(税込)がかかる点は押さえておきたいポイントです。また、月額料金の3万3000円(税込)からなので、小規模な会社だと、コスト負担が大きくなります。

【導入企業の評価】

【導入の決め手】

必要な機能が一通り備わっていて、料金も予算内に収まり、トップ画面によく使う機能だけ配置しておけるなどカスタマイズ性も高かったので、楽楽精算に決めました。

【楽楽精算のおすすめポイント】

OCR機能が便利です。スマホを使って領収書の画像を読み取るだけで、自動で仕訳が行われるので、入力の手間が省けます。読み取りの精度が高く、8割くらいは修正する必要がありません。領収書を紙で提出しなくてすむので、従業員の負担も減らすことができました。

また、ワークフロー機能も優れていると感じます。私たちの会社では10万円以上の経費は承認が必要というルールがあるのですが、金額に応じてしかるべき担当者に承認申請が届くように設定できます。経費精算以外の申請にも、楽楽精算のワークフロー機能を利用していますね。

【楽楽精算に対する不満】

ERP的な使い方ができたらよいなと思います。社員情報などに変更がでるたびに、楽楽精算や他のシステムのデータを一つひとつ変えなくてはいけないので面倒です。1つ修正すれば、他のシステムのデータにも反映されるように連携できるとありがたいですね。

企業情報:A社、化学メーカー、社員数80人程度、経理部アシスタントマネージャー

インタビュー実施日:2021年5月31日

3. 会計ソフトの導入も同時に検討するなら「MoneyForward クラウド経費」

マネーフォワード クラウド経費キャプチャ
出典:「マネーフォワード クラウド経費」公式サイト https://biz.moneyforward.com/expense/
マネーフォワード クラウド経費
公式サイト https://biz.moneyforward.com/expense/
運営会社 株式会社マネーフォワード

【利用料金】

初期費用なし
ユーザー1名~30名基本料金+月額550円/1ユーザー+オプション料金
ユーザー31名以上要問い合わせ
※編集部調べ
※料金は全て税込

【おすすめ企業】

・同シリーズの会計ソフトを導入している企業
・会計ソフトの導入も同時に検討している企業
・現金の立替をなくしたい企業

同シリーズの「マネーフォワード クラウド会計」は、一般的な会計フォーマットを再現したようなオーソドックスな作りで、経理担当者から「使いやすい」と評判です。同シリーズであれば連携がスムーズなので、すでにマネーフォワード クラウド会計を導入している企業には、特におすすめの製品です。

LINE PayやJ-Coin Payなどのモバイル送金・決済サービスとの連携により、立替金をキャッシュレス送金できるのも特徴。現金の立替をなくしたい企業にも有用な製品です。

4. 出張管理もできて、分析・レポート機能も備わっている「Concur Expense」

Concur Expense 経費精算キャプチャ
出典:「Concur Expense」公式サイト https://www.concur.co.jp/expense-management
Concur Expense
公式サイト https://www.concur.co.jp/expense-management
運営会社 コンカー株式会社

【料金】

初期費用なし
スタンダード(中小企業向け)月額3万1900円~
プロフェショナル(中堅・大企業向け)要見積もり
※編集部調べ
※料金は全て税込

【おすすめ企業】

・出張が多い企業
・外国籍の社員が多数在籍する企業
・経費分析を行いたい企業

Concur Expenseは、出張管理機能が充実しているのが特徴です。出張の申請、航空券やホテルの予約、経路検索、タクシー配車、カーシェアリング、Wi-Fiルーターレンタルなどが行えます。

経費規定違反を自動チェックする機能も備わっているので、不正対策も万全です。

21カ国以上の多言語に対応しているので、外国籍の社員が多く在籍する企業にも向いています。

利用料金はスタンダードプランの場合でも月額3万1900円(税込)からなので、小規模な企業だとコストは高くなります。

【導入企業の評価】

【Concur Expenseのおすすめポイント】

SuicaやICOCAにスマホをかざすだけで、交通費のデータを自動で読み取れます。法人カードやコーポレートカードと連携すれば、決済時にデータがシステムに自動送信されるので、入力作業や建て替えの必要がなくとても便利です。

また、クレジットカード会社が定めた基準に準拠した第三者認証のPCI DSSを採用しているので、他の製品と比較してセキュリティも高いと思います。

分析機能も優れており、誰がいくら使ったのか、月次や年次で算出可能。タクシー代や新幹線代などの利用額ランキングなども出せるので、不正防止やコスト改善などに役立ちます。

【Concur Expense不満】

料金が他の製品より高めです。また、機能が豊富なのはよいのですが、使いこなせない企業も多いと思います。

企業情報:B社(ITサービス、社員数250人程度、営業)

インタビュー実施日:2021年6月2日

経費精算システムを導入するメリットは?

最後に、経費精算システムを導入するメリットについて長谷さんにお聞きしました。

【経費精算システムの導入メリット】

・経費精算の作業工数を削減できる
・経理業務を「見える化」し、リスク管理ができる

経費精算の作業工数を削減できる

──具体的にどのような作業の工数が削減できるのでしょうか?

申請者と経理担当者、それぞれの立場で経費精算の流れを見てみましょう。

<申請者>

経費の支払い(立替)

精算書の作成(領収書の転記・経費の算出)

提出(承認)

立替金の受領(振り込み)

申請者にとってわずらわしいのは精算書の作成です。中でも領収書の転記や交通費の記入などに結構な手間がかかります。経費科目(勘定科目)を記入しなくてはいけない企業だと、さらに負担は大きくなります。

経費精算システムを使えば、こうした転記や入力作業がほぼなくなります。OCR機能を備えている製品であれば、スマホを使って領収書の該当項目を読み取り、システム上の精算書フォームに経費科目を自動で入力できます。

手書きや印影ありの領収書だと、OCR機能では読み取りきれず、手で入力し直さなくてはいけない場合があります。しかし、すでに読み取られたデータを少し修正する方が圧倒的に手間が減るため、例え完璧でなくともOCR機能の利用を推奨します。

入力ミスや入力漏れが起こりにくくなりますし、経費の金額が上限を超えたときなどは知らせてくれる機能もあるので、差し戻しの回数も減らせます。

<経理担当者>

精算書の受理

経費の確認(使途・金額)

仕訳・集計(帳簿への転記)

立替金の支払い・振り込み

経理担当者は、用途や金額の確認から立替金の支払いまで、1件1件処理しなくてはいけないので、相当な工数がかかります。また、仕訳・集計の段階では、経費を決算と税務の処理に振り分けるなどの作業も加わるので大変ですよね。

経費精算システムを導入し、会計ソフトやクレジットカードなどと連携させることで、仕訳や集計をシステム上で自動で処理できるようになるため、工数を大幅に削減できます。

経理業務を「見える化」し、リスク管理ができる

──リスク管理に関するメリットについて詳しく教えてください。

システム導入することで、経費精算の流れが「見える化」できます。その結果として、次のような効果が見込めます。

・不正または不適切な経費の支出を防げる 
・経理業務の属人化が防げる
・適正な会計ルールと手続きの浸透により、内部統制を強化できる

経費精算システムでは、履歴が残るので、短期間に経費が嵩んだときなど、それが何に起因するのかを追跡し、改善を図れます。

また、システム上では誰が行っても同じ作業になるため属人化しにくく、担当者が変更になってもスムーズに引き継ぎが行えるので、業務がストップしてしまう恐れもほとんどありません。

つまり、経費精算システムを利用することで、現行で何らかのリスクがあればそれを感知し、将来的なリスクに備えておけるようになるわけです。

まとめ

経費精算に関わる業務のわずらわしさをなくし、経理業務の健全化を図れることが、経費精算システムを導入するメリットです。

この記事で説明した製品選定時のチェックポイントを参考に、自社にあった経費精算システムを検討してください。

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